自動車雑誌編集者になるには? そして、その仕事とは?

私は、新卒で自動車雑誌出版社に入社しました。私が自動車雑誌編集者を目指したのは、モータージャーナリストになりたかったからです。しかし、自分にはジャーナリストになる根本要素が足りないことに気づき、諦めたのですが(その話はまた別の機会に)、クルマ好きとして憧れる職業のひとつを経験できたのは自分の財産です。
私の4年間の編集者としての経験から、雑誌編集者がどのような仕事をしているのかを紹介したいと思います。
どうやってなるのか?
大学を卒業して、自動車雑誌出版社に入社します。編集部に配属になれば自動車雑誌編集者としてキャリアをスタートできます。また、雑誌によっては、社員ではないものの、常駐で働く編集スタッフを募集しています(昔の自動車雑誌では、常駐のスタッフから有名ジャーナリストに成りあがった方もいらっしゃいます)。ちなみに、学歴はまったく関係がない世界です。大切なのは、“車が好きだ”という情熱、これに尽きます。
どんな仕事をするのか?
編集者のメインの仕事は、誌面の企画を検討して、取材をして記事を書き、誌面を作る仕事です。例えば、月刊誌では毎月次のようなサイクルで仕事が進みます。

①企画の検討
次号に向けた誌面の企画を考え、編集会議で誌面で特集する企画を決めます。
②ページ構成の検討
自分が担当する企画のページ構成等を考えます。編集者としてのセンスが問われますが、一番クリエイティブで面白いところです。例えば、6ページ分の企画を担当したとして、以下のような構想を練ります。
・ページの構成(全6ページの写真や記事内容、ページレイアウト等を考える)
・執筆ジャーナリストの検討(記事によっては編集者が書くときもあり)
・デザインのテイスト(デザイナーに伝えられるレベルでイメージを考える)
③打ち合わせ
ジャーナリストと企画について打ち合わせ、さらに詳細を詰めます。
④手配(取材先や撮影先、広報車両)
方向性が決まれば、取材先や撮影先へのアポ取り、自動車メーカーから借りる広報車両の手配等を行います。
⑤取材
ジャーナリストやカメラマンと一緒に取材に行きます。また、新車紹介や試乗記事の場合は、発表会や試乗会に参加します。
⑤ページデザインの依頼
取材で撮影した写真の中から誌面に使うものを選びます。また、検討したデザインイメージをデザイナーに伝え、ページのデザインを依頼します。
⑥原稿編集/記事執筆
ジャーナリストから原稿が届けば、内容を確認し、「てにをは」のチェックなどを行います(ちなみに、大物ジャーナリストの中には、原稿に一切手を付けてはいけないという方もいらっしゃいます)。また、自分で記事を書く場合は、取材内容を踏まえて記事を執筆します。
⑦校正
ページ構成、記事内容、「てにをは」を含めた最終チェックです。石原さとみさんのドラマ「校閲ガール」のイメージです。ちなみに、私がいた出版社は、校正も編集者が行っていました。すべてチェックが終われば、印刷所に原稿を納めます(入稿)。
仕事のやりがい、面白さ
Webメディアが増え、雑誌の発行部数が減っていますが、自分の企画が雑誌という形になること、そして書店に並ぶことが大きな喜びです。本屋さんで自分の記事を読んでくれている人を見ると、本当に嬉しいものです。
また、新車にいち早く乗れ、色々な車に触れられたり、普通の人が取材できないところに行けたりと、クルマ好きにはパラダイス(!?)のような仕事です笑。
辛いところは?
よくテレビドラマで編集者が描かれますが、あそこまで極端でなくても、体力的にハードな部分はあります。私が勤めていた会社は、夜11時にはビルが閉まるので徹夜はありませんでしたが、知り合いの出版社では徹夜はざらにあると聞きました。今は働き方改革が進んでいると思いますが、少なくとも9時5時で帰れる仕事ではありません。
また、長期連休を取ると仕事がきつくなります。例えば、週刊誌だと、お盆や年末年始の連休等は発売日を調整することもありますが、月刊誌だとそんなことはほとんどありません。そのため、締め切りまでの日数も変わらないため、休みを取った分だけ仕事の稼働日が減り、当然しわ寄せがくることに…。とは言え、しっかりと長期連休を取る人もいますので、個人の要領次第ですね。
そして、常に仕事で車のことを考え続けなければならないため、仕事と趣味の境界線がなくなってしまい、車が嫌いになってしまう人もいます(私もそんな時期がありましたが、数ヶ月で元に戻りました)。
編集者に向いている人は
「なるには」系のサイトには、編集者には世の中の流行をつかむアンテナ、読者のニーズをつかむ力などが必要などと書かれています。もちろんそれも大切な要素ですが、個人的には「車に対する情熱」が最も大切だと思います。これがあれば、どんな仕事でもやっていけます笑。編集という仕事への向き不向きはもちろんありますが、車好きでなければ読者の方々が読みたい記事が分かりませんので、何にもましてクルマ好きであることが大切です。